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ドラゴンは砂に足を取られて、派手に転倒した。このままでは追い付かれてしまう。急いで起き上がったときだった。
「のおおおおおおおおおお!?」
後ろから悲鳴が聞こえた。ドラゴンが振り向くと、小さな少女は思いっきり転んでいた。顔面で着地して、おまけに砂がちょっと滑ったらしく、顔を伏せたまま手も足も動かず、数歩分ほど滑るようにして移動していた。当然、剥き出しの顔は砂に擦られることになったはず。痛そうだ。
心というものは不思議なもので、自分より間の抜けた光景を見ると、急に落ち着き始めた。
そもそも相手は自分よりずっと小さい体をしていて、見たところ翼も持たず、武器の類も持っていない、たった一人の人間だ。いざというときは、ドラゴンが翼を生かして逃げればいいのだ。ようやっと自分の背中の翼を思い出したドラゴンは、そろそろと少女に近づいてみる。転んだまま起き上がらない少女に近づいて、今度は壊さないよう、慎重に、爪の先で彼女の纏うベージュの服をつついてみた。
少女はやっと顔を上げる。目と目が合った。
「どわあああああああああああああっ!?」
さっきと似たような声を上げられてしまったが、今度はどうにか堪えて逃げなかった。
「あの……大丈夫?」
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