第1章

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 「そこから松木部長は俺たちにその魔法かいくぐる魔法を俺たちに与えてくれた。その力で魔法都市の食べ物を好きな時好きなだけ手に入れることが出来ると教えてくれた。俺たちは弱い人間だ。普段から警察署の肥溜めのような飯を食べさせられている俺たちの気持ちはお前にも分かるだろう?俺たちは国民のために働いても何の見返りもない。いやそれどころか、あの魔法都市のせいで俺たちは無能扱いだ。この食い逃げは魔法都市に対するささやかな抵抗なのだ!」  これが加賀刑事の、いや、警察の本音か。金田は静かに目を閉じた。瞼の裏には様々な記憶が映し出されていた。命がけで働く刑事に憧れて勉学に励んだ日々、入庁凶悪してから仲間と共に凶悪犯と戦ってきた日々。警察食堂のまずい飯を食べながら皆で理想の警察官について語り合った日々。その記憶の風景は少しずつ焼き消えていく。  「魔法都市の魔法なんて存在しない。それが魔法都市の弱みです」  「え?」その場にいた全ての人が目を点にした。  「松木部長に直接聞いてみてください。きっと素直に白状してくれと思いますよ。警察の上層部と魔法局は裏でつながっています。科学を魔法にでっちあげるために。結局魔法もこれまでの日々もただのまやかしだったということですよ。その食事は食べておいてください。今日で皆さんとはお別れです」  「刑事を辞めるつもりか・・・」加賀は遠い目をした。  「これから警察がどうするのか。遠くから見させてもらいます。俺は俺なりにあの魔法都市と戦います」  金田は厨房の扉を静かに開けた。
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