第1章

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 「それがお前の答えか?」加賀の視線が見たことのないような鋭いものになっていた。  「それが真実だとしてもこれだけ表沙汰になった以上犯人は捕まえなければならない。それは分かっているな?」  「もちろんです。だからこそ、どうしたらいいのか私にはわかりません。私はどうするべきですか?」  加賀は額に手を当てて、しばらく考え込んだ。加賀が頭の中でどんな対応を考えているのか金田にはわからない。だが加賀の眉間にしわを寄せて思案している姿は金田に大きな安心感を与えた。きっと加賀なら何とかしてくれる。そんな想いが金田の中に確かにあった。  答えが出たのか、加賀はすっと立ち上がった。その口が動き出すまでの時間が金田にはやけに長く感じた。  「伊藤良助をここに連れてこい。彼に会えばこの事件を終わらせることができる」  その後、事件は解決した。驚くあっという間に。金田はぼんやりとたまにしか帰らない殺風景な部屋でコーヒーを飲んだ。事件が解決してから数日、金田は予想外の結末に気力を奪われていた。ぼんやりした目のまま、金田は床に散らばった新聞を拾い、その一面の大文字に視線を向けた。その文字はこう踊っていた。  「魔法都市、悲哀の料理店襲撃事件、犯人伊藤良助の真実」  伊藤良助を加賀のもとに連れてきてから1か月後、伊藤が自分の犯行を認めたと聞いた時、金田は驚き隠すことができなかった。彼のことを信じていたからだ。しかし、彼の自白内容を聞いたときは少々納得した。彼は魔法都市で飢えている子供たちに料理を分け与えていたそうだ。魔法をかいくぐった方法は自力で開発したと言っている。その方法もすでに解明し、管理局は新しく魔法をかけなおした。これで事件は加賀の言う通り終結した。多大なる違和感を残して。  ベランダに出て、生暖かい風を味わう。金田のアパートは住宅街に囲まれた12階建て、見るものなどないもない。しかし、何かを見ずにはいられなかった。  その時、ドアからチャイムの音が聞こえた。おそらく宅配便だろうと思った金田はのそのそとドアまで歩いて行った。  「お届け物です。サインをお願いします」  書類と何かが入った封筒を受け取って、金田は椅子に腰を掛ける。差出人は不明。不振だと思った金田はすぐにその封筒を開けた。
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