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「どうですか?私の作った料理の味は?中々のものでしょう?」
全員の視線が部屋の隅に立っている男に集まった。その男はただ寂しそうに刑事たちを見ていた。刑事の一人、加賀が震える唇で呟いた。
「金井・・・・いたのか・・・・」
「皆さんお楽しみのところに水を差してすみません。どうしても最後に皆さんとお話したくて腕を振るいました。一か月分の給料は吹き飛んでしまいましたけどね」
金田はふと笑って唖然としている刑事たちの顔を見た。不思議なことに滑稽とか軽蔑といった感情は金田の中には湧いてこなかった。あるのは仲間に裏切られた寂しさと悲しみだけだ。
「加賀さん。失くしていたボールペン返しておきます。魔法都市に落とし忘れていたものを友人が届けてくれました。良かったですね。娘さんから貰った大事な品でしょう?大切にしないと」
「金田、なぜ何も言わない?俺たちは食欲に負けて罪を犯した。最低だ。軽蔑されて当然だ」すっかり青くなった顔で加賀は俯いた。
少しこぼれそうになる涙をこらえて金田は全員の顔を見渡した。
「じゃあ聞かせてください。なぜ警察ぐるみで食い逃げをしたのか。なぜそんなことが出来たのか教えてください」
全員の顔が罪悪感で影を帯びる。
「事の発端は松木本部長が一年前、魔法都市で食欲に負けてある店を食い逃げしたことだった」加賀は重々しい声で話し始めた。
「一年前、松木部長はある極秘任務でポイント521を調査していた。その途中、魔が差したのか、任務の過酷さゆえの飢餓のせいか、彼は食い逃げをした」
「どうやって本部長は食い逃げをしたのですか?あの魔法をかいくぐる方法を本部長は知っていたのですか?」
「聞いているだろう?松木部長と管理局局長は知り合い、いや、松木部長は管理局局長の弱みを握っていた。それを利用として魔法を破る魔法を借りていたらしい」
「余程の弱みらしいですね。フフフ、真実なんて所詮そんなものですか」
加賀はじっと金田の顔を見た。
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