第1章

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 「場所?・・・まさか・・・・・・」はっとした顔の加賀を見て、金田は大きく頷いた。  「そうです。事件が発生した場所はポイント521です」  聞き耳を立てていた周りの刑事たちがあまりの事実にざわめき始めた。刑事たちは互いの慌てた顔を見つめ合って、ただただ黙り込んだ。  「動きましょう、加賀さん。この食い逃げ事件は警察の威信をかけて解決しなければなりません」  「今回の事件は今日の午後1時半、高級レストラン、スカイフォレストで発生した。目撃者は不明。指紋などの物的証拠は今のところ何も出てきていない」  その日のうちに食い逃げ事件対策本部が設立された。対策本部本部長の真剣なまなざしと広い会議室に集められた数百人の刑事が事の大きさを目に見えるものにしていた。  「皆も知っている通り、この事件はポイント521、魔法管理区域で起きたものだ。本来ならあそこで事件が起きるはずがないが、実際に起きたものは対処しなければならない」  本部長は眉をひそめて拳を握り締めた。  2040年から生まれた魔法都市、通称ポイント521。突如現れた魔導士たちによって造られた都市だ。  2035年、この頃、突如科学では到底説明できない能力を開花させる人間が少数だが現れ始めた。彼らの力は絶大で、あっという間に世界中から尊敬と羨望を集めた。魔導士と呼ばれた彼らは自分たちが選んだ優れた人間たちを集めて犯罪率0パーセントの都市を造り上げた。  金田自身も詳しく知っているわけではないが、その都市にかけられた魔法はあらゆる悪意、敵意、殺意を感知して、その感情を発している人間が犯行に及ぶ前に捕らえるらしい。  その犯罪のない都市の評判は瞬く間に広まり、この世のあらゆるものがその都市に集中した。そして、魔法も使えない無能な警察はその都市から追い出された。  「この事件を解決することは今一度、世間に警察の必要性を知らしめる絶好の機会だ。魔法に屈した我々の再戦だ。皆、どんな手段でもかまわない。この事件の犯人を捕まえるぞ」  全員の気合いの入った返事がだだっ広い会議室に響き渡った。    「え?被害額か?なんせ食い放題キャンペーンをしていたからよく分かっていないが、黒毛和牛のカレーと牛肉の赤ワイン煮込みのテリーヌ、サーロインステーキ、それとムール貝のオーブン焼きも食べられたから相当な額を盗られたよ」
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