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「うん。泊まってみる」メルの返事を聞いて、楽しげな表情のルシアがクッションから腰を上げた。
「ご案内しますね。私がお話を通せば、宿で良くしてもらえると思いますから。ローサイト卿はどうされますか? お泊りになられます?」
「そうだな。部屋だけ押さえておいてもらえれば有り難い。後から独りで行こう」
「どうして? ネウィルは一緒に来ないの?」
小首を傾げたメルに答えたのは、ルシエだった。
「それはね、ローサイト卿は僕との決着を付けるからですよ」
もったいぶった調子で言いながら、彼は円卓の下から平たい板を取り出した。そのひし形の板の表面は、白と黒のチェック模様に塗られている。
「遊戯盤?」
メルの短い問いに、ルシエがうなずく。彼は座ったまま、円卓の真ん中に遊戯盤を置き、挑戦的な目つきでネウィルを見上げた。
「まさか拒否などしませんよね? ローサイト卿」
「もちろん。望むところだ」
ネウィルが円卓を挟んでルシエと対峙した。向き合って座る彼らは、間に置かれた白黒の遊戯盤に、小さな駒を並べてゆく。金と銀とに光る何十個もの駒は、動物や人の形を模してある。
もはや盤上しか目に入らない様子の二人を見て、ルシアが呆れ気味のため息をつく。
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