第四章 王家の呪い

6/78
前へ
/371ページ
次へ
「うん。泊まってみる」メルの返事を聞いて、楽しげな表情のルシアがクッションから腰を上げた。 「ご案内しますね。私がお話を通せば、宿で良くしてもらえると思いますから。ローサイト卿はどうされますか? お泊りになられます?」 「そうだな。部屋だけ押さえておいてもらえれば有り難い。後から独りで行こう」 「どうして? ネウィルは一緒に来ないの?」  小首を傾げたメルに答えたのは、ルシエだった。 「それはね、ローサイト卿は僕との決着を付けるからですよ」  もったいぶった調子で言いながら、彼は円卓の下から平たい板を取り出した。そのひし形の板の表面は、白と黒のチェック模様に塗られている。 「遊戯盤?」  メルの短い問いに、ルシエがうなずく。彼は座ったまま、円卓の真ん中に遊戯盤を置き、挑戦的な目つきでネウィルを見上げた。 「まさか拒否などしませんよね? ローサイト卿」 「もちろん。望むところだ」  ネウィルが円卓を挟んでルシエと対峙した。向き合って座る彼らは、間に置かれた白黒の遊戯盤に、小さな駒を並べてゆく。金と銀とに光る何十個もの駒は、動物や人の形を模してある。  もはや盤上しか目に入らない様子の二人を見て、ルシアが呆れ気味のため息をつく。     
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

180人が本棚に入れています
本棚に追加