第三章 無謬の鉄筆

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第三章 無謬の鉄筆

 一  昼下がり。メルたちは、サッカーラ・キャラバン宿営地の外れに立った。  萌黄色の下草は目の前で途切れ、紫の砂が遥か地平の彼方まで広がっている。この広大な砂漠のどこかに、ピアンキ王の墓廟、そして無謬の鉄筆が眠っている。  すうっと深呼吸するメルの傍らで、全身を金緑の鎧で固めたネウィルが聞く。 「準備はいいか?」 「ああ、いーぜ、騎士サン」  軽く答えたのは、ジンだった。  ナップサックを背負い、腰に短剣を下げた彼は、額にバンダナを巻いている。負けん気の強そうな黒い目で、ジンが長身のネウィルをぐっと見上げた。 「ンで、アンタは何モンだって? まだ聞いてねーんだけどな」  どこか挑戦的なジンだが、ネウィルは例のごとく、全く感情の動きを見せない。兜の奥から群青の目をジンに注ぎ、ゆっくりと答える。 「そうだったな。俺はネウィル。ネウィル=ブラン=ローサイト。第九階戦士“戦匠(ロード)”だ。よろしく頼む」  ネウィルの階位を聞き、一瞬のけ反るジンだった。が、すぐに胸を張りなおしたジンも、しきたりに従って夕べと同じ名宣りを返し、ネウィルとメルを見比べる。 「んで、騎士サンとオメーは、どういう関係だって?」     
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