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第四章 王家の呪い
一
夜更けの幕屋。
柔らかな赤橙色の灯りの下、円卓につく砂精人の美女ルシアが、清廉な笑顔を湛えて小さくうなずいた。
「ああ、やっぱり私の思っていたとおり。さすが中央万神殿の書記ですね、メルローチェさん」
そう言って、ルシアが正面に座るメルを見つめた。彼女の虹の瞳は、称賛といたわりの光に満ちている。
そのルシアが、メルを挟んで円卓を囲む騎士ネウィル、盗掘者ジンにも微笑みかけた。
「ローサイト卿も、ジン君も、お二人ともお疲れさまでした。メルローチェさんの補佐、ありがとうございます」
まるで自分のことのように礼を述べたルシアが、メルローチェに目を戻す。
「それに、メルローチェさんも、お話ししてくれてありがとうございます。真っ先にここへ来てくれて、私も嬉しいわ」
「あ、そんな。わたしたちこそ、夜遅くにいきなり押しかけて、本当にごめんなさい」
額を円卓に着けるばかりの勢いで、メルローチェが深々と頭を下げた。
鏖殺の地の只中、牡豹の埋葬地に眠るピアンキ王の墓廟を盗掘し、夜更けに宿営地へ帰還したメルたち。彼女、それにネウィルとジンも、その足でルシアとルシエの天幕を訪れていた。
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