読書感想文の倒し方

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 「まぁいいか。紙と鉛筆は?」ミノリはビニール袋から砂糖を取りながらたずねてきた。ぼくは言われるままにノートと筆箱を取り出した。  「じゃあここにでも座って」ミノリが示したのは目の前のブロックでできた花だんの縁だった。その足下の辺りには巣があるのか、アリが右往左往としていた。  ぼくは花だんの縁にこしかけた。  「ありがと。北村くんの仕事はこれで終わり」  「え?…何かしたっけ」  「砂糖を持ってきてくれたし、影も作ってくれてるし」そう言うミノリは確かに、ぼくの影に隠れていた。ていうかぼくが暑いじゃないか。どこにいても日には照らされるんだろうけど、何だか損をしている気分だった。  「じゃあ昨日の続きね。北村くんは宿題って何であると思う?」ミノリはぼくが渡した砂糖で地面に小さな山を作りながらたずねてきた。目はやっぱり地面に向いている。  「んー…休みの間にサボらないように、とか?」ぼくも釣られて地面を見た。アリたちはまだ砂糖の小山に気づいていないのか、近寄ってすらいない。  「それって夏休みの間の話?普段のは含まれないんじゃない?」  「そっちもなの?んー…何でだろ」  「あれはね、あたし達を選別するためだよ」  「…せんべつって?」ミノリに視線を動かしながら聞いた。ミノリは変わらず大きな目で地面をにらみつけていた。     
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