読書感想文の倒し方

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 取りかかるに当たって最初から問題がある。本を1冊読まないといけない。これがなかなかムズカシイ。だけどそれはまだいい。読めば終わるんだから。この宿題の一番の問題点は感想文のところだ。400字づめの原稿用紙をうめなければならない。けど文章なんて何も思い付かない。それでもどうにかしないといけなくて、原稿用紙を机に置いて、となりに読んだ本を並べて、もんもんうんうんとうなり続け、そうやってどうにかこうにか書き出す。文字数をかせぐため、ですます口調は欠かせない。改行をたくさん入れて空間を増やし、それで出来上がるのは、“楽しかったです”と、“面白かったです”をこれでもかと並べ立てたもの。そんなカッコ悪いものしか書けないでもやもやとする。全然楽しくないし面白くない。それでもこれまではそうやってきた。  だけど今年からは話が変わった。4年生になったからか、原稿用紙が増えた。400字かける4枚。増えすぎだ!去年は2枚だったじゃないか!こんなものどうやってうめるんだ!その宿題を手渡された時点で、ぼくは頭を抱えた。  それからの日々はひどいものだった。せっかくの夏休み。山に川に海に花火に夏祭り。楽しいことが目白押し。なのに虫を捕っていても、泳いでいても、火花を散らしていても、綿飴を食べていても、400字かける4枚が頭をかすめる。その度に何をしていてもつまらなくなってしまう。どうしてくれるんだ、ぼくの夏休み!こんなのオウボウだ!そう文句をぶうぶうと言ったところで夏休みはどんどんと過ぎていく。どうにかしないと。  8月の中ごろ、何はともあれと本を探した。読書家の母の本棚をながめる。簡単そうな、かつ面白そうなやつ。そして見つけたのが『ナゲキバト』。それほど厚みもなく、タイトルもシンプルにカタカナ5文字。もう時間もない。よく分からないけどこれにしよう。     
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