読書感想文の倒し方

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 そうして読み出すと、…何だか暗い。もう少し明るいやつの方がいいかもしれない。でも時間ももうない。仕方がないので主人公が祖父の下で成長していくのをだまって読んだ。厚みのうすさのおかげで数日で読みきった。読みきったけど…何て書こう。  思い付かない文章を一生けん命考え続けてあくる昼下がり。夏休みの終わりに背中をせっつかれ、もんもんうんうんとうなりながら書き上げたら、いつもと同じ物ができた。原稿用紙に“楽しかったです”と“面白かったです”が行列を作っていた。ため息が出る。何でこんなものしかできないんだろうか。そうしてぼうっと窓の外を見るとエツジがウチをのぞき込んでいた。  「わ!びっくりした!エツジ、人ん家のぞいて何してんだよ!」  「ヒロト、遊ぼーぜ」エツジはぼくの言葉を気にすることもなく、さそってきた。  「お前、宿題やったのかよ」  「えー、まだだけど」 エツジがのんびりと答えた。  「まだって、もうすぐ夏休み終わるんだよ」  「そういうヒロトはやったのかよ」  「今終わらせた」  「まじか。写させてくれ」  「バカ。いやだよ」特に読書感想文なんて、見せることもできないよ。  「けち。まーいいや。じゃあさ、遊ぼーぜ」  「どんだけ遊びたいんだよ。ていうか暑いじゃん。外とかイヤだよ」今日は朝から晴れている。蝉もわんわんと鳴き散らしている。こんな中で遊んだら頭が変になるんじゃないか。とける。絶対ノウミソがとける。     
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