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プールというのは市民プールの事だ。流れるプールとか、面白いものはない。競技用みたいなレーンがいくつか並んでいるだけのよくあるプールだ。夏休みというのは大人にはないようで、平日の昼間は案外空いている。おじいさんおばあさんがプカプカ浮いているのを除くと、子どもの楽園みたいになっている。近所で涼しく、かつ気軽に水遊びができるとあって、エツジと遊び行くことも多かった。
その市民プールまでは自転車で行く。エツジの家はプールの近くのため、ぼくの予定も聞かないでわざわざ迎えに来たらしい。まあ宿題終わったらやることもないわけだけど。
お母さんにエツジと一緒にプールに行くと伝え、気を付けていってらっしゃいという声を背中で聞きながら、ぼくは玄関を飛び出した。家の裏手から自転車をひっぱり出し、かごに水泳用具を放り込んで門の所まで行くと、すでにエツジが自転車にまたがって待っていた。
「遅いよ、暑いよ、早くしろよヒロト」
「うるさいなぁ。急いだじゃん。変なリズムつけるなよ」
ぼくらは連れ立って自転車を走らせた。地面から立ち上る熱気を早く引き離そうと少し急ぐ。
「でももう終わらせるなんて、すごいな」
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