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「自由研究はもう終わってる。蝉の一生について書いたわ」そう答えながら、いそいそと地面に目を向けた。
「…え。じゃあ何してるの」
「だからアリを見てるって言ったでしょ」
「自由研究でもないのに?」
「宿題じゃなきゃ見ちゃダメなの?」もう一度ふり返ったその目には、少し怒りがにじんでいた。
「いや…そうではないけど」
ミノリはこちらへの興味を失ったのか、また視線をもどした。宿題でもないのに、変なやつ。もう帰ろうと足の位置を変えた時、ふと屈んだ彼女の足元に角砂糖が置かれているのが見えた。
「それ、倉田さんが置いたの?」
ミノリは無言でまたふり返る。まだいたの、と言いたげな目だ。
「そうよ。どうやって持ってくのか、見たかったの」
「どうやって持ってくか?」
「北村くん、アリの行列って見たことある?」
「…ないけど」
「あたしもないの。でもこないだ読んだ小説にアリの行列が出てきて、本当にそんなことが起こるのか確かめたくなったの」それだけ言うとまた地面に目を落とした。
本で読んだからってわざわざ見に来たの?全く分からない。さすが、本の虫。そこでふと思いついた。倉田さんなら、読書感想文の書き方を知っているんじゃないか。
「倉田さん、読書感想文もう書いた?」
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