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宇賀神が部屋から出て行って、川嶋一人になる。
熱のせいか、昨日の痴態のせいか、身体がだるい。
昨日の痴態。
あんな狭い車の中で、散々喘いでしまった。
自分では気づかなかったけれども、人に見られて興奮する癖でもあったのだろうか。
いやいや、久しぶりの龍の愛撫に我を忘れただけだと思いたい。
運転手はともかく、側近は昔からよく知っている相手だ。
さすがに次顔を合わせるときどんな顔で合わせればいいのか、と思うと気が重い。
はあ、と息を吐いたら、自分の口から出た息が熱くて驚く。
確かに熱がありそうだ。
今日が休みでよかった。
川嶋はそう思って瞳を閉じた。
うとうとと眠りかける。
カタン、と小さな音がしたから、宇賀神が戻ってきたのかと思って瞳を開けようとした。
が。
口許に何か布のようなものを押し当てられる。
やや乱暴とも言える手つきに、背中がすぅっと冷たくなった。
龍じゃない。
彼が自分に触れるときは、いつでも丁寧で優しい。
声を上げようとしたが、そもそも掠れた声しか出ないのだ。
布に染み込んだ何かの薬液の匂いが、体調の悪さも手伝ってか、すぐに川嶋の意識を遠退かせた。
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