2.

3/7
前へ
/25ページ
次へ
宇賀神が部屋から出て行って、川嶋一人になる。 熱のせいか、昨日の痴態のせいか、身体がだるい。 昨日の痴態。 あんな狭い車の中で、散々喘いでしまった。 自分では気づかなかったけれども、人に見られて興奮する癖でもあったのだろうか。 いやいや、久しぶりの龍の愛撫に我を忘れただけだと思いたい。 運転手はともかく、側近は昔からよく知っている相手だ。 さすがに次顔を合わせるときどんな顔で合わせればいいのか、と思うと気が重い。 はあ、と息を吐いたら、自分の口から出た息が熱くて驚く。 確かに熱がありそうだ。 今日が休みでよかった。 川嶋はそう思って瞳を閉じた。 うとうとと眠りかける。 カタン、と小さな音がしたから、宇賀神が戻ってきたのかと思って瞳を開けようとした。 が。 口許に何か布のようなものを押し当てられる。 やや乱暴とも言える手つきに、背中がすぅっと冷たくなった。 龍じゃない。 彼が自分に触れるときは、いつでも丁寧で優しい。 声を上げようとしたが、そもそも掠れた声しか出ないのだ。 布に染み込んだ何かの薬液の匂いが、体調の悪さも手伝ってか、すぐに川嶋の意識を遠退かせた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

657人が本棚に入れています
本棚に追加