645人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
そんな可愛いことを言う唇に、猛烈にキスしたい。
そして、できることなら、その唇を汚した嫌な記憶を上書きしてやりたい。
けれど、その可愛いひとは、すぐに宇賀神の欲求に敏感に気づいて、さっさと両手で口を押さえている。
真面目で頑固なところも川嶋で、そういうところも好きなんだから仕方がないけれども。
そんな可愛い仕草をされたら、止められないのが男の欲望というやつだ。
脇腹をスッと手のひらで撫でる。
伊達に十何年も抱いてきていない。
川嶋の身体のことなんて、全部わかってる。
案の定、くすぐったそうに川嶋が身を捩った。
口を押さえていた手が緩む。
すかさずその手を掴んで、拒む隙を与えずに唇を重ねた。
「ん……っ」
口の中が熱のせいで酷く熱い。
ひとしきり口の中を舐め回して、あまり無理をさせてはいけない、と宇賀神は唇を名残惜しげに離す。
「龍、ダメ、って言った、のに」
「アキのなら、風邪の菌も全部俺のものだ」
俺にうつしたくないなら、もう風邪なんかひくな。
そんな傲慢なことを言ってやったら、そのひとは困ったように頭をこつんと胸に押し当ててきた。
最初のコメントを投稿しよう!