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宇賀神御用達の闇医者に点滴をして貰ったおかげか、翌日の日曜日に1日ゆっくり休んだためか、週明けには普通に出勤できる状態になっていた川嶋だ。 しかし、まだ咳が出るのでマスクをしてクリニックに向かう。 なんとかその日の業務をこなして、明日の予定を読み上げようとしたところで、彼のボスに止められる。 「明日のスケジュールの書類はそこに置いて行けばいい。お前は明日は休みをとって、きちんと風邪を治してこい」 川嶋は、遊佐と視線を合わせ、いえ、と断ろうとしたが。 「ダメだ、お前は明日は休みだ。業務命令として出勤は禁ずる」 そう断じられてしまった。 遊佐は仕事には厳しいが、スタッフには甘い。 しぶしぶ明日のスケジュールの書類や、彼が休んでも滞りなく仕事が進むように他の書類なども完璧に揃えて、遊佐の机の上に並べた。 戸締まりをして、クリニックを出る。 黒塗りの車が、スッと近寄ってきた。 「アキ、迎えにきた」 風邪をひいている川嶋が心配で仕方ない過保護な恋人が、車の中からドアを開けて両手を広げている。 30近いスーツの男を毎回膝の上に乗せるのもどうかと思うけれど。 宇賀神はそうしたいと思ったら絶対に実行する男なので、仕方なくその腕の中に身を任せる川嶋だ。 マスクの上からなら、とキスも抵抗せず受ける。 「…龍、僕、明日休みになった」 布越しの唇が離れたから、そう告げたら。 宇賀神は、何か勘違いしたようだ。 「じゃあ、少しぐらいなら無理しても平気か?」 マスクをぐいっと引き下げられる。 「龍!うつるからダメだって…」 「これだけ一緒にいてうつってないだろ?」 お前の菌は俺に害をなさないから大丈夫だ。 よくわからない理由を盾に、唇を塞がれる。 それでも、ちゃんと川嶋を気づかってくれたのだろう、いつもよりは短く軽めのキスだ。 「明日は療養がてら、一日中ベッドで過ごそうな?」 嬉しそうにそう言う宇賀神に、余計風邪が悪化することにならないように…とため息をついた川嶋だった。 その風邪が、密着しまくっている宇賀神にではなく、上司の遊佐にうつってしまい、遊佐が溺愛することになる恋人との運命の出逢いを果たすことになるのは、また別の話である。
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