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翌日の川嶋の休日は、宣言どおり、ベッドの中から一歩も出して貰えない一日だった。
宇賀神は、無理のない程度に優しく川嶋を抱いては眠り、目が覚めるとまた彼の身体を優しくまさぐっては鳴かせ、ひとしきり愛すると満足して眠り…という甘く濃厚な一日を堪能して、川嶋の多忙で不足していたスキンシップを存分に補充したらしい。
凄く満足そうに眠っている。
起きているときはその半端ない迫力と凄みが、実年齢よりもだいぶ歳を重ねているように見せて、ゴリゴリのオッサンになりつつある宇賀神だが。
寝顔は高校生の頃とあんまり変わらないな…と川嶋は、無精髭がチクチクと伸びてしまっている顎をそっと指で撫でた。
と、その指を掴まれて、ぱくりと口に含まれた。
起こしたかと思ったら、どうやらまだ眠っている。
無意識にやっているらしい。
はむはむと指を軽く噛まれて、何の夢を見ているんだろう?と川嶋は少し笑った。
川嶋を拐った男がどうなったのか、彼は訊かない。
宇賀神は、川嶋にとっては幼なじみで友達で家族で恋人で、かけがえのないひと、だ。
そのひとが川嶋に見せる顔は普段、甘く優しい顔だけだ。
彼を抱いているときは、また少し違う顔もたくさん見せてくれるけれども。
どの顔も、根底に流れる深い愛情を含んでいる。
だけど、宇賀神は、紛れもなく生粋の極道の男だ。
川嶋を拐った、という罪以外にも、組織を裏切るという罪を犯した男を簡単に許しはしないだろう。
怒れる宇賀神は、きっと全てを灼きつくすような激しさでそこにあるんだろうと思う。
それが宇賀神であるならば、そんな姿もきっと自分は怖いと思いながらも惹かれるはずだけれど。
宇賀神は川嶋の全てを受け入れてくれるから、川嶋もそうしたい。
だから、宇賀神がそれを川嶋に見せたくないと思うのならば、無理に覗き見て受け入れるのではなく、見ないでいることを受け入れようと思っている。
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