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中学生の頃の夢を見ていた気がする。 あの頃は宇賀神がいつも側にいた。 母も祖母もいて、ただ無邪気に笑っていられた。 幸せな夢だった。 重い瞼をそっと開けると、見慣れた裸の胸筋が視界に飛び込んでくる。 というか、がっちりと抱き締められていて、それ以外が見えない。 ベッドの広さと寝心地からいって、ここは川嶋のマンションではなさそうだ。 宇賀神の屋敷か。 最近、川嶋が忙しかったせいで、会えなかった2週間の前もずっと、短い逢瀬は川嶋のマンションで慌ただしく、が多かったから、宇賀神の家に来るのは久しぶりだ。 だから、あんな夢を見たのか。 「アキ、起きたのか?眠いならまだ寝てていいぞ」 今日は休みなんだろ? 宇賀神の声は、中学生の頃に比べて更に太く低い。 含まれる凄みと迫力も、比べ物にならない。段違いだ。 川嶋が相手で、普段よりずっと甘い声を出していても。 あの頃も大好きだったけれども、今はもっともっと、過ぎた月日の分だけ更に好きだ。 川嶋は、頬をその胸筋に押し当てる。 「起きる。お腹空いた」 そう言ったつもりだったが、自分の声とは思えない、ほとんど声にならない掠れ声が出て驚く。 「あれ…?」 無理に声を出そうとしたら、ケホッと咳が出た。 宇賀神の腕の力が緩んで、顔を覗き込まれた。 「アキ?声が出ないのか?」 額に大きな手のひらが当てられる。 「熱がありそうだな」 昨日、無理させたからか。 眉間に皺を寄せ、宇賀神は彼に最も似合わない反省の色をチラリと見せた。 「今、何か喉に良さそうな飲み物を持ってきてやるから、そのまま寝てろ」 彼はベッドから起きて、クローゼットにかかっていたシャツを適当に羽織る。 自分の身支度を整えた後、肌触りの良さそうなパイル地のパジャマを奥の方から引っ張り出してきて、裸で寝ていた川嶋に着せてくれた。 ……大きさが違いすぎて彼シャツどころかバスローブみたいになったけれども。 当然ズボンは履いてみるまでもない。 「お前のサイズのも用意しとけばよかったな…どうせいつも裸で抱きしめて寝るからいらないと思ったんだ」 ありがと、これで大丈夫。 声にならない声で、そう言う。
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