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「わたしとヴァンの子、いつ生まれるかわからないってムーンは云ってた。ヴァンがおなかの中にいたときのことを憶えてたら、参考になるかもって思ったのに」
凪乃羽の声には不安が潜んでいる。
鋭く察したヴァンフリーは、ブーツを脱ぐと片肘をついて隣に横たわると、凪乃羽の腹部に手を当てた。
「死ぬことはない」
「ヴァンは大丈夫だって云ってくれない。泉でも。みんな云ってくれたのに」
「上人は死ぬことはなくても痛みはある。知っているだろう。それに、出産の経験はなくとも、ラクじゃないという知識は持ってるはずだ」
「……心配してます?」
「そうじゃなかったら、この気持ちはなんだ」
遠回しの云い方に凪乃羽は笑う。
「ヴァンのあの痛みに比べたらきっとなんでもない。……たぶん」
あとから自信なく付け加えると、今度はヴァンフリーが失笑した。
「大丈夫だ」
現金だが、ヴァンフリーが口にしたとたん凪乃羽は心強くなる。
うなずくと、うっとりするような微笑が応えた。
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