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次の瞬間、入り口を濡らした汚らしい唾液も役に立つことはなく、切り裂かれるような痛みがフィリルを襲う。
目を見開き、その視界に入った木々までもがフィリルに襲いかかるようで、ショックに耐えきれなかった。
「フィリル!」
遠のいた意識を呼び覚ましたのは、驚怖の声と――
「フィリル!」
二度め、怒りに満ちあふれ、空をつんざくような声だった。
*
パッと目を見開いた“フィリル”と同時に、目が覚めて飛び起きた。
部屋を見渡せばまるで景色が違い、夢だったとわかっても、フィリルの名を叫ぶ声は妙に生々しく耳もとに残っている。
そして、あの人はだれかに似ていた。
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