364人が本棚に入れています
本棚に追加
/575ページ
「お母さん、この人、知ってる?」
夕食を取りながら、向かい合って座った母の知未にチラシを差しだした。
講演会のチラシには、わずかに斜めを向いた古尾が写っている。
知未はダイニングテーブルに身を乗りだすようにしてチラシを覗きこんだ。
「知らないわ」
と首をかしげた知未は嘘をついているふうではない。
夢はやっぱり夢なのか。
知未はチラシを手に取ってしげしげと見つめると。
「ずいぶんと見栄えのいい人。一度会ったら忘れない感じだし、芸能人じゃないのよね?」
「そこに書いてあるでしょ。イベントプロデューサー。芸能界との繋がりはあるけど、芸能人じゃない。三年になって、新しい講義を受けてるって云ったの憶えてる? その特別講師の人」
「そうなの? ラッキーね」
チラシから顔を上げた知未は能天気な様子でおもしろがっている。
最初のコメントを投稿しよう!