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アカリは再び、『ネズミ』の方を向いた。
『彼』の故郷に対する想いが『海』ではなく『夜空』の彼方にあるのだとしたら?
そして『高度な文字を持つ文明』‥‥
「‥‥言いやしたよね? 『ノーコメントだ』って」
『ネズミ』は、下を向いていた。
無論のこと肯定はしないが、さりとて否定もせず。
口の端を噛むその姿は、何処か辛そうでもあり。
「‥‥ああ、そうだったな。『聞いてもらうだけ』で充分だ。それで私は満足だよ」
準一が大きく頷いて、本を『ネズミ』に手渡した。
「これはどうも。それから他言無用‥‥それだけは、くれぐれもよろしくお願い申し上げやす。あっしはこれで『帰ります』んで‥‥」
それだけ言い残して、『ネズミ』は帰っていった。
その腕に、大事そうに『本』を抱えて‥‥。
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