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普段は書斎でヘラヘラしているか、居間でボヘーっとTVを見てるしか能のない父親だが、一応それでも『専門分野』ではスキルがあると見える。
「へぇ‥‥やるじゃん。で?」
「おう! ま、とにかくそんな具合で‥‥そこまでだ。それ以上、確かな事は言えない。もしかすると、私が思っている以上に『大発見』かも知れんからな」
すっ‥‥と、準一が本を引く。
「えぇーっ! 何その『引き』はさぁ‥‥勿体つけないで教えてよぉ!」
アカリがブーイングした時だった。
「アナター、お客さんよぉ、あの‥‥『ネズミって言って貰えれば分かる』って言うんだけど?」
階下から母親の声が聞こえる。
「おお?珍しいな。『ウワサをすれば陰』とはこの事だ。すまん、アカリ。玄関へ行ってお客さんを此処まで案内してあげてくれるかな?‥‥どうせ、同じ話だから一緒に聞けば良い」
「‥‥はぁい」
少し不貞腐れながらも、アカリは階下に降りて『ネズミ』に「こちらどうぞ、父が部屋で待ってます」と案内した。
「へへ、こりゃどうも‥‥」
白髪混じりの短髪に、ヨレたトレンチコート。慇懃に頭を下げる仕草は、まさに遺跡を嗅ぎ廻る『ネズミ』を思わせる胡散臭さだ。
「やぁ、ネズミさん。どうしたんだ?こんな突然に」
部屋へ招き入れる準一に、ひたすら恐縮しながらネズミが用件を切り出す。
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