ワード No64

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普段は書斎でヘラヘラしているか、居間でボヘーっとTVを見てるしか能のない父親だが、一応それでも『専門分野』ではスキルがあると見える。 「へぇ‥‥やるじゃん。で?」 「おう! ま、とにかくそんな具合で‥‥そこまでだ。それ以上、確かな事は言えない。もしかすると、私が思っている以上に『大発見』かも知れんからな」 すっ‥‥と、準一が本を引く。 「えぇーっ! 何その『引き』はさぁ‥‥勿体つけないで教えてよぉ!」 アカリがブーイングした時だった。 「アナター、お客さんよぉ、あの‥‥『ネズミって言って貰えれば分かる』って言うんだけど?」 階下から母親の声が聞こえる。 「おお?珍しいな。『ウワサをすれば陰』とはこの事だ。すまん、アカリ。玄関へ行ってお客さんを此処まで案内してあげてくれるかな?‥‥どうせ、同じ話だから一緒に聞けば良い」 「‥‥はぁい」 少し不貞腐れながらも、アカリは階下に降りて『ネズミ』に「こちらどうぞ、父が部屋で待ってます」と案内した。 「へへ、こりゃどうも‥‥」 白髪混じりの短髪に、ヨレたトレンチコート。慇懃(いんぎん)に頭を下げる仕草は、まさに遺跡を嗅ぎ廻る『ネズミ』を思わせる胡散臭さだ。 「やぁ、ネズミさん。どうしたんだ?こんな突然に」 部屋へ招き入れる準一に、ひたすら恐縮しながらネズミが用件を切り出す。     
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