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「すんません‥‥実は、この間お売りした『古い本』ですがね‥‥少々具合が悪くなっちまったんで、返品をお願いしたくって」
「ええっ!『この本』の事かい?」
準一が、さっきまで見ていた本を指差す。
「へい、その本のことでして」
「おいおい、そりゃぁ無いだろう。私は君の言い値で買ったんだよ? それを今更『回収』は無いだろう?」
「へぇ! そりゃぁもうセンセイの仰るとおりでござんすが‥‥何しろ、どうにもならなくって」
ネズミの顔色を伺うに、態度は低いが『引き下がる』つもりは無いようだ。
「困った人だね、全く。アレかい? もしかして所有者に無断で持って来た‥‥とか?」
要するに盗品ではないのか?という話だ。
「いや‥‥まぁ‥‥何というか、とにかくご返品を。代金はこのとおり、全額返金いたしやすんで」
ネズミが封筒を差し出す。
‥‥薄くないな‥‥その封筒。
アカリは、その封筒の『厚み』を睨みつけた。
返金されたら、少しはアタシに回せよな? 買いたい靴とかあるし!
「仕方ないな」
準一が大きく息を吐く。
「じゃぁ返却するんで、せめてコピーだけでも取らせてくれないか? 何、すぐに終わるからさ。そしたら『現物』は返すよ。私は研究さえ出来れば、後の事はどうでも良いからね」
ところが。
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