第3話 母の名と決意

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連れてこられたのは、首相官邸。 目の前で寛いでいる、サンタクロースみたいなおじいさんがニコニコと両手を広げている。 「リラ、会いたかったぞ。ほうら、パパだぞう」 私は助けを求め、一歩後ろにいるノアを見た。 どうしよう。いきなりパパだぞうとか言われても……。 ノアは優しく微笑み、サンタクロース然としたグラドラシル王に向き直る。 「……国王陛下。りら様にいきなり申されてもお分かりにならないと思います。生まれてすぐ、だったのでしょう? 」 「そ、そうだな。あんな真っ黒髭面男に可愛い娘を渡してなるものかと……動揺したからな」 ええと、バームグラードンって言う軍事国家の王様は真っ黒髭面と……。 いやいや、あなたも真っ白髭面……。 「しかし……一緒に帰っては貰えまいのか? 」 しょぼんとしている。 1年前あんなに堂々とハキハキと述べた人が、モフモフの大型犬かのようにこちらを見ている。 すっと視界を遮るようにノアが目の前に立った。 「……説明をしっかりなさって頂かなければ俺もりら様にお仕えできなくなってしまいます。困りますので、親バカ発揮してないで国王のお仕事をなさってくださいね」 ……へ? 私に対しては選んでいたかのように、歯に絹を着せない言葉の羅列に目を白黒させた。
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