第四話 作り物

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用意された部屋に案内された。 部屋に入るとノアと二人きり。 ノアの顔をマジマジと見つめる。 「……ん? どうかされましたか? りら様」 私の視線に気がついても、驚いた様子もなく、優しく。 不思議だった。でも、考えてみれば当たり前だ。 ノアだって人間なんだから。 きっと私が女の子だから、……プリンセスだから優しいんだ。 そう思っても口に出せなかった。 だから、代わりに別のことを聞いた。 「グラドラシルって魔法大国なんですよね? ノアはどんな魔法を使えるんですか? 」 一瞬、本の一瞬。ノアの顔が強ばった、気がした。 「ああ、俺は……。"使えない"んです。適性がなくって」 恥ずかしそうに笑う。……だが、瞳は笑っておらず、寒気を感じた。 これ以上踏み込むなと言われている気がした。 ……乙女ゲームでもあったな。こんなシチュエーション。 ゲームだからはっきり脅迫紛いの台詞までついて。 『とことん甘やかせてあげるから、詮索しないでよね』 そんな感じの、種類の台詞。 今正にそんな空気だ。 そもそも今日会ったばかりの人にあれこれ聞くほど野暮ではない。 「そうですか。人には適材適所ってありますものね」 そういう人もいておかしくない。 「……りら様」 「は、はい」 未だに慣れない。 「俺は貴女の執事なんですから、敬語を使われると困りますよ」 綺麗な困り顔をされた。 「は、はい! あ、うん! わ、わかった! 」 言葉とは裏腹に、心は冷静になっていた。 ……完璧過ぎた。作り物感がした。 すべてを見透かすような瞳に少しばかり、恐怖も覚えた。 「流石です、りら様」 天使のような完璧な微笑み。 これを眼福という。
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