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作り物、そう認識することで私は……生きてきた。
「りら様、少しだけ失礼しますね」
そう言って、本当に少し、ものの五分程度で戻ってきた。
トイレにでも行ってきたのかな?
「あ、ノア。おかえりなさい。あの、私、お城に住まなきゃだめなの、かな? 」
いきなり煌びやかな世界に飛び込む勇気まではまだなかった。
「そのことでしたら……。りら様が生活環境変化で体調を崩される恐れがありますと銘打ちました。こちらにももうお世話になるわけには参りません。国王陛下は呑気に羽を伸ばしていらっしゃいますが、皆様の迷惑になってしまいますし。ですので、このニッポン国にりら様の私邸を設立することに致しました」
大きなことをさらりと言われた。
「国王陛下は一緒に暮らしたいと駄々を捏ねられましたが、いきなり一緒に暮らしてもギクシャクしてしまうだけですからと説得致しました。ですが、りら様にはグラドラシルやガンドルジアがどのような国か知って頂くために、頻繁に赴いて頂くことになると思いますので御理解下さいませ」
手配の速さと国王さえも口説き伏せる手腕に何も言えなくなる。
あの五分で畳み掛けたんだろうか。
それに、ここで異論なんて待っていないだろう。
決定事項として言っているんだ。
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