第2話 私の執事

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私は今、馬車の中にいる。 公道に馬車なんて、5年前だったらありえなかった。 明治時代あたりならまだ違和感なかっただろう。 そして、目の前には……。 イケメンがいる! 執事の恰好をしたイケメンが! 未だに私は状況が掴めていない。 「……様、りら様」 「は、はいい?! 」 呼ばれていることにやっと気がつく。 「な、何でしょうか?! 」 くすくすと笑われた。 顔が真っ赤になる。恥ずかしい。 「緊張、してしまいますよね。すみません」 天使が目の前にいる! 笑顔が眩しい! 「あ、えっと、その……」 言葉が紡げない。 プリンセスになれと言われるより、目の前の天使に動揺が隠せない。 2次元でしかお目に掛かれないような美青年。 夢か? 夢なのか? 左頬を抓ってみる。 「いだっ」 痛かった。夢じゃなかった。 「だ、大丈夫ですか?! 」 白手袋を無造作に外し、ぐっと近づいたかと思ったら、柔らかく左手を掴み、右手で頬に触れた。 「ダメですよ? 女の子なんですから。着いたら冷やしましょう」 ポケットから綺麗な白いハンカチを取り出し、当ててくれる。 「着くまでこれで抑えていてください」 「あ、 ごめんなさい。こんな綺麗な……」 すっと唇に彼の人差し指が柔らかく食い込む。 「そんなことは気にしないでください」 更に綺麗に微笑まれる。 何ぞー?! これなんぞー?! 頭はパニック状態。 「あ! 申し訳ございません。お名前を確認するのが精一杯で。俺はノア・ドールマン。ノアとお呼びください。貴女の執事になります。新米執事ではございますが、今後ともよろしくお願い致します」 照れながらいう彼に、もうこのまま昇天してもいい気分になったのは言うまでもない。
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