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何の為に、ここに来たか分かりませんか?
新しく届いた本を運んでいる時、突然袖口をクイっと引っ張られた。
「え」と思わず呟く。そこには隣町の高校の制服を来た少女が居た。
茶色の髪は肩くらいの長さで、半袖のセーラー服から細く白い腕が露となっている。ふんわりと靡く髪に、俺は少し目を見開く。
隣町にはもっと大きな書店があるにも関わらず、何の為にわざわざ来たのだろうか?
彼女は手に持っていたメモ帳を掲げた。
『すみません、探している本があるのですが』
メモ帳に書かれている字は丸みを帯びていて、女の子らしかった。
俺はしばらくポカーンと突っ立っていた。彼女が目の前で手を振り、ハッと我に帰る。
「あ……えっと……」
『貴方の声は聞こえます。大丈夫です』
「貴方の声」と書かれていて思わずドキッとする。
自分のことを特定で指されると、何だかソワソワした気分になった。
「タイトルとか、分かりますか?」
事前に用意していたのか、彼女は次のページをめくる。
『―――っていう小説です』
その文字を見た瞬間、俺の中のリミッターがプツリと切れた……気がする。
身体の底から沸き上がる熱に押され、相手のタイミングに合わせずペラペラと喋りだしてしまった。
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