1人が本棚に入れています
本棚に追加
メインストーリー
高瀬群青は、野球が得意な小学校6年生。
地域のチームではショートを守り、中軸打者を務めている。
けれども、練習帰りの夕方。
ふいに目の前に空間が歪んだような穴が生じ、群青は興味本位で入り込んでしまう。
行きついた先は、見知らぬ世界。
やがて群青はそこがヒストムと呼ばれる異世界だと知る。
どうして自分がここに、と戸惑いながら周囲を歩くと、町の外れに人だかりを見つける。
そこは広場で、野球とそっくりの競技が行われていた。
人々の話ではピッチ&ヒットというスポーツらしい。
しばらく眺めていると、ルールは野球とほぼ同じ。
群青はここに紛れ込んだのが単なる偶然なのだろうか、と疑問に思う。
試合をしていたのは、地元のチームと旅芸人一座のチームだった。
草試合にも関わらず観客は多く、ピッチ&ヒットが町民の娯楽になっていることがうかがえた。
試合は旅芸人チームの圧勝で終わったが、群青には帰る場所がない。
しばらく広場の片隅で佇んでいると、同年代らしき少年と少女に声を掛けられた。
2人は旅芸人チームの一員だった。
はっきりと覚えていたのは、大人顔負けのプレーを披露していたからだ。
それもそのはずで、少年のほうは軽業師、少女のほうは剣術使い。
幼い頃から修練を重ねたという2人は仲睦まじく、時折言い合いをしながらも心地よい空気をつくっていた。
少年の名はカジン、少女の名はサルシャといった。
すっかり打ち解けた3人だったが、談笑をつづけていると大柄な髭面の男が現れた。
相手はカジンの父親で座長のミガン。
見掛けによらず陽気で優しい性格に思えたが、群青の一言で表情が一変してしまう。
「ここが平和そうな異世界で安心した。こうしてピッチ&ヒットを楽しんでいるところを見ると、魔王や魔族もいないんだろうし」
たったそれだけだった。
カジンとサルシャの口利きで、ひとまず一座で面倒を見てもらえそうな雰囲気だったが、ミガンは急に態度を固くする。
最初のコメントを投稿しよう!