最期

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 慶長5年、9月15日 「島左近様、討死」 「南宮山の毛利はまだ動かぬかっ」 「松尾山の小早川は」 一進一退、敵味方が入り乱れる戦況の中、決定的な出来事が起こる。小早川の裏切り。 「おのれ、小早川っ」 小早川の軍勢が駆け降りる先には大谷吉継の軍。東軍の藤堂、京極と奮戦しているところ。吉継は裏切りを予期していたかのごとく、軍を素早く展開させ、後ろから襲ってくる小早川を押さえた。 ーー全てを巻き込み起こしたこの合戦、はなから負けは考えていない。負けは全ての終わりだ。 さぁどうだ。俺の人生は。俺の選択は。俺の生き方は。義は。 豊臣家の最期のあがき。徳川の世にはさせない。 どうだ。わしは多数の死者を出して世を騒がせた、独裁者か? どう見る後世の者たち。  小早川の裏切りで勢いを増す東軍、遠く見える大谷勢は大軍に飲み込まれ潰滅しようとしている。 ーー勝てはしない、か。が、豊臣の世があったことを、この世に義があることをワシは遺していく。石にかじりついてでも。意地を。 さぁ、ここからは負け戦、見せてやる。徳川よ。太閤の恩を仇で返した者共よ。 崩れていく西軍の布陣を見ながら、石田三成は戦況から目をそらした。銃声や突撃の雄叫びで溢れる戦場。 ドクンドクンと鳴り止まなかった大きな胸の鼓動が、静かになっていく。 さぁ、わしをどう見る、後世の者たちよ。 石田三成はニヤリと笑い、そして、空を見上げた。
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