父親と兄の消息

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父親と兄の消息

おじさんと父親の思い出話をじっくりと聞いた。 「おじさん、父とは今でも連絡を取ったりするんですか?」 オレは父親の事は何も知らない。 母親から聞かされたのは、コロンビア人の前妻との間に生まれたハーフの男の子を連れ、母親と再婚したという事だ。 その前妻との間に生まれた子供はコロンビアで生まれ、4,5才の時に母親と再婚する為、日本に来た。 ろくに言葉も分からず、慣れない環境でその子供に母親は手を焼いた。 その後、オレが生まれ、育児に専念したいが、その子は母親に全く懐かない。 ただでさえ、オレが生まれたばかりで、父親は海外出張も多く、母親一人でハーフの子とオレを育てた。 だがそれも限界に達し、母親は 好き勝手に駄々をこね、言葉も理解出来ないハーフの子を虐待してしまう。 出張から帰ってきた父親はハーフの子の身体中のアザを見て、虐待だと気付き、これを機に夫婦仲がギクシャクし始めた。 そして母親がもうこんな子と一緒に生活するのは無理!と言って、夫婦の関係は終わった。 オレが母親から聞いたのはその事だけで、今は何処で何をしているのか全く知らないと言う。 その父親と同級生だったというおじさんの話を聞いているうちに、是が非でも会ってみたくなった。 おじさんは腕を組んで目を閉じた。 こういう時、おじさんは何かを考えている。 実に分かりやすい仕草だ。
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