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俺は努めて平静を装って、目を細め、口角を上げた。
「キス、すれば良い?」
「そ……いう訳じゃ……」
背中に回した手を持ち上げて、彼女の上気した頬を包み込む。いつまでも触れていたい滑らかな肌。
「俺はキスしたいけど?」
「!」
ゆっくりと頬をなぞり、顔の横に落ちる髪を後ろへ流した。現れたあの甘い耳もピンクに色付いている。
「か、加納……あ……の」
高田はおどおどと声を上げた。けれど逃げる素振りは見せない。
「高田はしたくないの?」
少しだけ顔を傾けて、意地悪く言ってやる。口紅の色が分かる三宅さんをストーカー呼ばわりしたこともあったけど、俺だってストーカー張りに高田を見てきたから分かる。
高田はきっとノーとは言わない。
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