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――加納龍太郎がいるの。
熱っぽく潤んだ瞳で俺を見ていた高田。正直、自分の気持ちに応えて貰えるなんて思ってなかったから、いつでもお前に会いに来るだなんて浮かれたガキみてぇな返事しかできなかったけれど。
スマホに視線を落とす。住宅街の地図は大きな目印もなく分かり辛いことこの上ない。
『久しぶり! え? こっちに帰ってくるの? 小百合の住所? そんなの自分で訊きなさいよ。え? ああそうね。あとでメールしてあげる。セブンが側にあるから。あとは自分で探して』
なんだか借りを作るみてぇで本当は嫌だったけれど、他に知っている奴も居ないから小川に訊いた。
「セブンが側に……ってあれか?」
漸く目印のコンビニを発見して、バッグの肩紐を担ぎ直す。大股で近付くと中から白いビニール袋を持った客が出てきた。
「あっ」
顔半分を覆うようにしてぐるぐる巻きにされたマフラーに、どんなに着込んでいるのかもこもこと膨らんだコート、ちょこんと出ているデニムの脚にはムートンブーツ。
間違いない。高田だ。
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