甘い獲物

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 三宅さんには負けられないと、精一杯背伸びをした。多少強引に迫った自覚もある。良いところを見せようとして失敗もしたけれど、それでも高田は俺を選んでくれた。  高田の匂いに誘われるように、彼女の耳を隠す髪に鼻先を埋める。 「……だな」  耳元でぽつりと呟けば「あん」と可愛らしい喘ぎにも似た声が返ってきた。こんな声を聞かされたら堪らない。 「くすぐったい。そこでしゃべら……きゃっ!」  俺は衝動に負けて彼女の耳をぺろりと舐めた。次第に腹の奥から獣の自分が沸き上がってくる。 (やべぇな)  食い物でもないのに、甘い耳。  もう一度、耳の形に舌を這わせた。 「んんっ! ちょっ! かのっん!!」  抗議の手が俺の腰をドンドンと叩く。俺は彼女を拘束する手はそのままに、上半身を反らすようにして視線を合わせた。  真っ赤な顔が、潤んだ瞳が俺を見上げている。
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