甘い獲物

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「何?」  意地悪く訊いてやれば、高田は唇をへの字に曲げた。 「…………」  黙り込んだ彼女にもう一度言う。 「言わなきゃ分かんねぇよ」  俺の言葉に、高田は視線を落として「…………なのに」と小さな声で呟いた。掠れた語尾しか聞き取れなくて「もう一度」と促した。  高田は真っ赤な顔を持ち上げて、可愛らしく俺を睨む。 「……キスだって……まだなのに」 「!!!」  さっきよりもほんの少しだけ大きくなった声に、心臓を鷲掴みにされた。息が止まりそうになる。 (それ反則だろ)  心臓はバクバクと騒ぎ出し、沸騰した血液が身体の中心に集まってくる。 (落ち着け……)
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