第二話 宝石の世界に

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 少し後ろを歩くルロは、報告書の内容を思い出すことを止め、話に集中しました。 「逆に城の北側は自然が豊かな地帯です。川や山などの景色が見えますよ」  二人は森の中に入ります。奥に入れば入るほど景色が変わります。  足下の苔は、シャボン玉を固めたような拳大の緑色の丸い石になっています。苔が飾化現象によって孔雀石になった孔雀苔(くじゃくごけ)です。  緑柱石の木が立ち並び光沢を感じさせています。 「あ、彼処に兜虫いますね」  タマが言うのを見るとそこには黒曜石の兜虫。黒輝甲蟲(こっきこうちゅう)がいて、太陽の光を鋭く反射させています。  かんかんと甲高い音は、啄火鳥(ひつつき)。啄木鳥の嘴が黄金色をした黄鉄鉱になっていて、木を嘴が打つ度に小さな火花を散らします。 「この世界を私が作ってしまったということは知っています」  歩きながら、タマは再び語り始めます。悲しそうな声で。寂しく鳴り響く一つの鈴の音のように。 「多くの人がおそらくこの景色を好まないことも。私にも、この国の民だった者にも、父上も母上も、この景色は皆を不幸にしました。死のうとしたりもしました。けれど、そんな勇気が自分にあるわけでもなく、のうのうと生きてしまっています」     
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