第二話 宝石の世界に

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 ルロは黙って話を聞きました。話もしました。それぞれの楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しんだこと、涙したこと、怒ったこと、ルロの国のこと、タマが薫陸香姫だったころ……。  歩きながら色々な場所も周りました。燃え続ける火が飾化して蒼白い胆礬(たんばん)が立ち並ぶようになった奥火の土。鉛筆を横から見たような柱状節理の景色が壁中に広がる折壁峠……。  話していると時間が経つのはあっという間でした。ルロは景色に圧巻され、タマは久しぶりの会話に夢中でした。  最後にタマはルロに見せたい景色があると言って鳶ケ森の中にある壺の沢(つぼのさわ)という場所に着くと、沢の上流に上ります。  行く先には、千丈ケ滝(せんじょうがたき)という小さな滝と小さな滝壺がありました。  夜。辺りはもう暗くなって、満月の光が差し込むのみです。  すると、水辺の木陰から青白い光がゆらゆらと宙を舞い始めます。蛍の発光部が蛍石になっている螢石蟲(けいせきちゅう)です。次々と河面を埋めていきます。頭上を飛ぶものは、まるで流れ星です。しかし、しばらくすれば、完全に蛍石となり線香花火のように、ポツリと河面に波を作り消えていきます。  滝によって空に向かった霧がラピスラズリとなって月の光を浴びながらきらきらと輝きます。  ルロはこの世の物でない素晴らしい景色を見ている気分になりました。     
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