0人が本棚に入れています
本棚に追加
姫は蛍を愛しました。すると、蛍は体表が固くなり、淡い青色の光を発するようになりました。そして、みるみるうちに蛍石になり、ころんと落ちて河辺の宝石となり輝きました。
姫は兜虫を愛しました。すると、兜虫の体表がガラスの煌めきを帯び美しい黒の光沢を見せるようになりました。そして、みるみるうちに黒曜石になってぼろぼろと崩れ、森の中の土になりました。
姫はカワセミを愛しました。すると、カワセミは翡翠細工の美しい姿になるようになりました。そして、白地に澄んだ緑色とほのかに暖かい緋色が混じった羽を持ち、最後には河に飛び込み河床の宝石となりました。
姫は草木を愛しました。すると、草木は様々な色の光沢を持つようになり、固くなりました。そして、それらは踏み締めると霜のようにぱりぱりと音を立てて砕かれ、残骸がきらきらと地表に広がるのでした。
姫は人を愛しました。すると、人は体の手足の先から美しい宝石になるようになりました。そして、宝石になった体の部分から風化して消えてゆく者もあれば、銅像のように壊れずにその場に残る者がありました。
この現象に国民は慌てます。国の物が、人が次々に目の前で不気味で美しい石になるものですから、次はいつ自分がそうなってしまうのか恐ろしくて仕方がなかったのです。
最初のコメントを投稿しよう!