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数年後、そんな久慈之国に一匹の若い竜が訪れることになります。
竜は名を「瑠露(ルロ)」と言いました。体の大きさは一メートルばかりで、胴体の下に真っ直ぐ伸びた二本の脚を持ち、爪を持った器用そうな両手と細い頭、大きな目を有して、全身を覆う黄金色と褐色の薄い羽毛が縞模様を成していました。
ルロは人語を解し話す珍しい竜だった。この世界で人語を解する竜はそれほど多くないのです。
ある日、ルロは不思議な話を耳にしました。
なんでも、一国の姫が自国を滅ぼしたらしい。愛したものを全て石にする力で、それはそれは恐ろしいものだったという。
ルロが住んでいたのはロラシア国という、ごつごつとした黒色の岩石とさらさらとした赤茶けた砂が広がる果ての無い砂漠の国でした。
僅かなオアシスを巡りながら旅をする一族で、ときたま会う旅人と物々交換をしながら生きてきました。
薫陸香姫の話をした旅人は、名を「パラベス」と名乗る魔術師であった。久慈之国から来たというパラベスは、一冊の本をルロに渡しました。
それは分厚い本でした。中身は手書きで、美しい挿し絵がある悲劇の姫の話。光輝く驚異の生き物たち。
美しい、とルロは素直に思いました。
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