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15、6才でしょうか。そこには少女がいました。黒曜石のような艶やかな光沢を放つ長い髪と澄んだ琥珀色の目、整った顔、高価そうな薄いピンク色のふわふわとしたドレス。例えるならそれは、作り物の人形のようでした。
その少女の周囲には、茶色の砂で覆われてざらざらしていそうな薔薇や澄んだピンク色をした薔薇が咲き誇り、黒色の羽を持った蝶や白透明な羽を持った蝶がひらりひらりと舞っていました。ルロは、擦れるほど読んでいた報告書の内容を思い出します。
砂に表面を覆われた薔薇の砂漠薔薇(デザートローズ)、水晶質で僅かに光を屈折させるきらきらとした薔薇の水晶薔薇(クォーツローズ)、薄い黒雲母の羽をひらひらと揺らす黒雲紋蝶(くろうんもんちょう)、白雲母の羽を薄く散りばめながら舞う白雲紋蝶(しろうんもんちょう)……。
目の前を本でしか見たことの無い生物が日の光を浴びて眩しく光を放っているのです。ルロはそれだけで嬉しくなりました。加えて、この光景をやはりとても綺麗だと思ったのです。
心を決め、ルロは木陰から顔を出して、少女に声をかけます。
「あの……」
ゆっくりとこちらを向いた少女は、悲しそうな、驚いたような不思議な表情の後に喜びの表情になります。
「これはこれは失礼を。ようこそいらっしゃいました。久慈之国の姫、薫陸香姫と申します」
さらさらと丁寧な口調で、鈴が鳴るような綺麗な声が空気を震わせます。
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