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第一話 竜と姫
あるところに、久慈之国(くじのくに)という国がありました。大陸から離れた広い広い海の中にひっそりとあった島にあり、島の中央には立派なお城が建っていました。
小さなその国では、綺麗で豊かな自然とともに生き、国王や王妃は民を愛し、民に愛される平和な日常が広がっていたのです。
国王と王妃には一人娘の姫がいました。姫は名を久慈之玉神子(くじのたまみこ)といい、またの名を「薫陸香姫(くんのこひめ)」として城下に知られていました。姫は琥珀色の澄んだ目をしており、髪は黒曜石のように黒く艶だっていて、たいそう美しかったそうです。
姫はすくすくと多くの人に愛されながら育ちました。そして、母親に何度もこう言われていたのです。
「たくさんのものを愛し好きになり、愛され好かれなさい。」
初めは良くは分からなかった姫も愛を知る年頃になると、言い付け通りに姫はたくさんのものを愛し好きになりました。
心の底から美しい自然を愛し、虫を愛し、鳥を愛し、草木を愛し、人を愛しました。
しかし、姫が愛を自覚し振り撒くと不思議なことが起こり始めます。
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