空中遊泳

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空中遊泳

 よく晴れた秋の日、僕はレジャーシートを広げて、近所の森林公園にいた。隣には、彼女が気持ちよさそうに寝転がっている。 「なんだか、ずっと眺めていたい天気ねぇ」  そう言う彼女の提案で、この公園にやってきたのは、つい1時間前のこと。  何をするでもなくぼんやり過ごすしかない僕をよそに、彼女は本当にただ空を眺めている。  何を考えているのだろうか、と僕も空を見上げるが、雲ひとつない青空に吸い込まれそうになる感覚におちいり、グラッと姿勢を崩す。もう、3回目だ。首も痛くなるので、座ったままの僕は、ずっとは眺めていられない。  ふと周りを見ると、小さい子どもたちが走り回っている。公園の端のベンチには、本を読んでいる青年もいる。ちょっとよそ行きの格好をした家族連れは、遅めの昼食を楽しんでいる。みな、思い思いのひと時を過ごしていた。  レジャーシートの周りには、黄や赤の葉が絨毯のように敷きつめられている。もうすぐ、木々は寒そうな姿に変わる頃だ。
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