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レシェーナは目を見開き、優しい口調で告げる。
「いって」
手に促され、翠光の円が真っ白に咲き誇る花へと飛んで行った。円は花を囲むとゆっくりと回り続ける。
数秒後、花から光が消え始めた。力を無くしたようにしおれ、円の動きに従って徐々に上昇する。そのまま土から引き抜かれた花は円に捕まれるようにしてレシェーナのもとまでやってくると、静かに瓶の中へと入り込む。
「うん。いい子だね」
彼女が蓋を閉めながら穏やかな口調で語り掛けた。
「い、今のはなに?」
後ろではエルサが目を丸くして固まっている。
「一度眠らせてあげたんです。わたしがもっと研究して、最適な環境が整ったらそこにまた植えてあげようと思います」
「そ、そうじゃなくて。あなた、今何をしたの?」
「たいしたことありませんよ。これがわたしの幻術ってだけです」
「幻術……」
「幻の力によって組み上げた術式ですよ」
「わかっているけど、本物は初めて見たわ。何というか、まるで奇跡ね」
「そう言われると、わたしも嬉しいです」
レシェーナの微笑みが闇の中で静かに輝いた。
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