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やがて、森が終わって開けた場所に辿り着いた。気が付くと後ろに獣の姿はない。
「あ、あれ?」
おかしいと思いながらも、彼女はどこかほっと一息つく。大きく深呼吸をして、なんとか心を落ち着かせようとした。森の匂いに混じって花の甘い香りが鼻から脳へと癒しを与える。
ひとまず落ち着きを取り戻すとレシェーナは少し先に行った場所に木造の小屋を見つけた。木製の小さな佇まい。煙突のような場所からは煙が出ており、人の気配を感じる。
中で休憩でもさせてもらおうかと思った瞬間。
「ガァァァァァァァ!」
背後から強烈な咆哮を浴びた。
「そんな――」
振り返ろうとしても遅い。獣の獰猛な息遣いがすぐそこまで迫っているようだった。レシェーナは自分の身に訪れる衝撃と激痛を覚悟する。
「やめなさい!」
不意に聞こえたのはレシェーナではない別の女性の声。
直後、強烈な光がほとばしりながらレシェーナの頬をかすめ、彼女の後方へと飛翔した。
獣の断末魔がこだまし、静寂が辺りに宿る。
レシェーナは何が起こったのかわからず、まだその場で動けなくなっていた。
「大丈夫ですか?」
一人の女性が彼女の元へ駆け寄り、心配そうに顔を覗き込んでくる。銀色の髪と銀色の瞳がまぶしいほどに輝いていた。
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