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「ずいぶんと気難しい子なのね」
「はい。でも、大事な旅の仲間です」
「そう。それはよかったわ」
「ところで、一つ訊いても言いでしょうか?」
急な投げかけにエルサは少々面喰ったようだった。表情を固めながら、レシェーナの言葉を待っている。一方、当のレシェーナはそんな様子に気を取られることなく、ごく自然な口調で話を続けた。
「ここ数日、何か奇妙なことはありませんでしたか?」
「奇妙なこと?」
「はい。それが幻草につながるヒントになると思うんです」
「奇妙なこと……そうねぇ……どうだったかしら……」
言われてエルサは考え始める。その間、レシェーナは室内を見渡した。外観は多少古さがあったが、中に入ってしまうと想像よりも綺麗な場所だった。部屋もいくつかあり、台所には調理器具が整理整頓された状態で並べられている。レシェーナがいるのはもっとも広い部屋であるようだが、最大でも四、五人が入れるだろう。これに寝室があることを考えると、一人で暮らすにはいささか広すぎるようにも思える。
「そういえば、少しだけ思い当たることがあるわ」
「え?」
観察に一生懸命になっていたせいで、レシェーナは一瞬エルサが何の話をしているのか忘れていた。
「少しだけ恥ずかしい話なのだけれど。もしかしたら、あなたの言う奇妙なことなのかもしれないわ」
「それは、どんな話でしょう?」
恥ずかしいと前置きしたエルサのことなどお構いなしにレシェーナは訊ねる。ほんの少しだけエルサが困惑したように思えたが、彼女はすぐに元の表情に戻って口を開く。
「これは、五年くらい前のことなのだけれど――」
透き通るような凛とした声が静かに語り出す。レシェーナは視線を彷徨わせるのをやめ、彼女の話に意識を向けた。
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