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届けもの~
きっとこれも、運命なんだと考えた。
私でも、まだ涙がこぼれるなんて……。
蚊取り線香の香りが、私の意識を覚醒させた。
16時頃、パートの仕事を終えて夕食の食材を購入した後に
家に帰るため、帰宅道を歩いていた。
もう今年で50になり、足は重く腰もいたい。
それでも、家に夕食を待ってくれている家族がいる。
いま、何をしているだろうか?
息子はまたゲームに夢中かな?
娘は友達と電話でもしてるのかしら?
子供たちが高校生になると、小さかった頃より
親との会話が少なくなってきていた。
さみしいと感じることもあるけれど、食事には全員そろって
ご飯を食べる。
これほどの幸せは、私にはもったいない
それにしても、息が上がり足取りが重い。
こんなにも体力がなくなってしまったのかな?
これもやっぱり年のせい?
電車が来ましたよ~という警告音とともに
私は踏切の前で、立ち止まる。
ギューンっと目の前を通過すると同時に
「あら? ねぇお嬢ちゃん!」
ランドセルを背負った女の子が、前を走って行くと
一冊の本を落としていった。
咄嗟に声をだすが、すでに視界にはいなかった。
中腰になり、本を手に取ると平仮名で名前が書いてる。
「まりな」
娘と同じ名前が書いてあった。
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