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クリフは逞しすぎる丸太腕に捕まって暴れていたけれど、そもそもの体格が違いすぎる。危険を感じたけれど、タコはまったくもって好意的な顔をしていた。
「俺、クリフ様にお礼が言いたくて!」
「おっ、お礼??」
「だってぇ、クリフ様に治療して頂かなかったら俺、どうなっていたか分からないんですものぉ。彼氏にも出会えなかったしぃ」
あ、こいつ女役なんだ。そして彼氏、強者過ぎるな。
全員が白い目になったのは、言うまでもないことだった。
「有り難う! う~ちゅっ」
「ぎゃぁぁ!」
クリフ哀れ。だが、相手は好意としてのほっぺチューなので、誰も助けに入れない。
タコはそのまま王都に向かって行ってしまった。
「南無三」
「もぉ、嬉しいけれど嫌だぁ」
クリフが珍しく泣いた日だった。
そうしていると他の人も帰ってくる。それは、気になっていた子達だった。
「あっ!」
「「ランバート兄ちゃん!」」
「え?」
遠くから複数の女の子、男の子。その中には一際長身の青年が二人いて、こちらを見ていた。
「イスタユブと、コチメトル?」
「おうよ!」
「お久しぶりです、ランバート様。その節は大変お世話になりました」
ニッカと笑うイスタユブの隣で、知性に磨きをかけた様子のコチメトルは丁寧に頭を下げる。かつて森の中で暮らしていた少年少女が、とても明るい顔でそこにいた。
「言葉、上手になったんだな」
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