故人は生者の幸せを願う

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「お陰様で。クレミー様が勉学や言語を教えて下さいましたので。ただ、まだ語彙が少なく思います」  そんな事まったくないくらい、コチメトルの言葉は流暢で違和感がない。彼は元々頭の良い子だったから、飲み込みも早かったのだろう。 「あたし達ね、今お外でもお仕事してるの!」 「あたし、ご飯屋さんで」 「あたし、お針子してるのよ!」 「俺は船の荷下ろし」  まだ小さな少年少女が口々に言う。その子達の頭を優しく撫でていると、イスタユブも側にきて少年っぽい顔で笑った。 「俺はギルドにいるんだ。まだ見習いだけど、将来はこの町を守れるようになる」 「僕もギルドにいますが、傭兵は苦手なので運営の事を学んでいます。将来はクレミー様について商人をしたいと思っていますが、まだそこまでの力はありません。経営の基礎などを学んでいます」 「二人とも、似合っていると思うよ」  明るい笑みが輝いている。それを見るとどこか安心できた。  別館のお世話は彼らがしたいと申し出てくれて、お願いする事になった。そんな少年達を見たアルブレヒトは、どこか厳しい目をしている。 「彼らはラン・カレイユから、奴隷として帝国に入り逃げ出したようです。親が生きているかどうかも、まだ分からないそうです」 「死んではいないと思いますが、見つけるのは難しいでしょうね」     
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