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「エドワードさん、死者を思い出して穏やかな気持ちや、優しい気持ちになる事は良いのです。思い出し、楽しかった、幸せだったと思う事は故人を悼む事にもなります。ですが、悲しみや痛み、後悔に泣いてはいけません。それは死者を縛りつけ、苦しめてしまいます」
「!」
驚いたように目を見開いたエドワードは、今にも泣いてしまいそうな顔をする。ギリギリで持ちこたえている。そんな様子だ。
「彼は安らかですよ。そして、恨みなんて抱いていない。貴方を愛していて、貴方の幸せを願っています。生者と死者、既に生きる場所が違うのです。貴方は、生者の幸せを選んで前に進まなければ。いつまでも、ロディは貴方が心配で側を離れられません」
「いるの、ですか?」
アルブレヒトは静かに頷く。途端、エドワードは堪えきれずに涙を流して顔を覆ってしまった。
「幸せになってほしいそうです。幸せだったそうです。だから、もう悲しまないで欲しいと」
側へと座ったアルブレヒトが、更に肩をポンと叩く。途端、エドワードの肩は震えて嗚咽が漏れる。長く長く、一時間近くそうして泣いているけれど、不思議と悲しい気持ちにはならずむしろ穏やかに思えた。
たっぷりと泣いた後、エドワードは照れたもののすっきりとした顔をして笑った。
「まだ、気持ちの整理は付かないのですが……でも、考えてみます」
「希望をちゃんと伝えていいのですよ」
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